僥倖

僥倖とは、こう云うことか。




仕事中であった。
普通に応対をしていたら、一組のカップル。
女性に見覚えがあるなあ、と思いながら見ていると。

「もしかして、●●(私の本名)?」

と、尋ねられた。
そこで、確信した。
嗚呼、小学生時代の友人だ―――――と。


本当に、こう云う事があるのかと驚く。
ずいぶん音信不通だった。
私が悪いのかもしれない、何せ私は筆まめではなかった。
それでも、心の奥底には時折顔をのぞかせる存在が、彼女でもあり、あの頃の自分でもあった。

お互い、いつの間にか大人になっていた。
彼女は結婚して、子供がもうすぐ産まれるとのこと。
旦那様もとても優しそうな、良い人であるようだ。

友人の幸せな姿を見ると、こちらも心が明るくなる。

本当に良い日であった。


人生色々と苦しいこともあるが、こう云うほんの少しの僥倖の為に私たちは生きているのかもしれない。