『めんたいぴりり 博多座版』

舞台の『めんたいぴりり』を観た。




この作品、2013年の夏にテレビ西日本が開局55周年を記念して製作された作品のドラマ版である。辛子明太子を普及させた「ふくや」の創業者をモデルに、福岡が生んだ漫才師、博多華丸大吉の華丸さんが主演を務めたこのドラマは、華丸さん曰く「東のあまちゃん、西のめんたいぴりり」ぐらいの高視聴率を“(放送された)福岡県だけ”マークした。
私も当時はリアルタイムで観られないので、録画して観ていた。更には総集編やら再放送やらも観たからもう何度となく観て、その度に笑い、泣いた作品である。

舞台版があると聞いて、これは是が非でも行きたいと思い、母と二人で観劇してきました。
一部Wキャストになっていて(岡村吾郎役)、ドラマ版でも同役をされた西村さんが出演された回である。
では、以下は感想です。
めんたいぴりりを知らない人には説明不足な点も多々あるとは思いますが、ご容赦を。



舞台版を観るにあたっての注目ポイントは3つあった。

①ドラマ版を舞台版でどうやって凝縮するのか。
②ドラマ版で「ふくのや」を支えた肝っ玉お母さん、千代子さんのキャストが富田靖子さんから酒井美紀さんに代わるに当たり、どう変化するのか。
③私の愛する“スケトウダラ”役の大吉先生は映像出演と書かれているが、あの軽妙なやり取りを映像でしのげるのか?


この3点を軸に感想を書く。


①ドラマ版を舞台版でどうやって凝縮するのか。
前半と後半でいうと、断然後半がうまくまとめられていた。前半はとにかく話の筋を入れ込もうという感が出て、なんていうか展開に無理なところが見受けられた。そもそもあの話を2幕14場で収めるのは難しい。そりゃとっかえひっかえいろんな登場人物のエピソードを入れないと終わらないわな〜、と思いつつ前半を観ていた。が、後半になったらドタバタした前半とはちょっと趣が変わり、辛子明太子を作ることを通して戦争で亡くなった仲間、今の従業員への愛と絆をしっかり描いていた。ふくのやの発展の為にと奔走する従業員が自転車で舞台狭しと賭ける姿は迫力があったし、ふくのやの主人、俊之と千代子の思い出の山笠も、本物の山笠が登場したときはなんだかもう涙が出た。喜劇ってこうだよね、と本気で思った。吉本新喜劇みたいなずっと面白いものが喜劇ではなく、藤山寛美さん……今は藤山直美さんがされているような喜劇(笑いもあり、人情もあるもの)が観たかったので、図らずともこの舞台版めんたいぴりりはその意味では笑えるし泣ける、素敵な喜劇になっていたと思います。

②ドラマ版で「ふくのや」を支えた肝っ玉お母さん、千代子さんのキャストが富田靖子さんから酒井美紀さんに代わるに当たり、どう変化するのか。
これはね、かなりうがった考え方だとは思うのだけど、やっぱりドラマで富田靖子さんがあまりにも的確な演技をされていたから、酒井美紀さんは本当にどうなさるんだろうと思ってたんです。でも、富田さんの描いた人物像を踏襲しつつ、富田さんにはない、やわらかな部分も併せ持った千代子さんになっていたと思う。でも、何度も俊之さんに怒鳴るの大変だったと思うわ・・・。

③私の愛する“スケトウダラ”役の大吉先生は映像出演と書かれているが、あの軽妙なやり取りを映像でしのげるのか?
ドラマ版では良い味を出していたスケトウダラさん。忙しい大吉先生は映像でどんな風に華丸さん演じる俊之さんに絡むのかと思ったら……いや、工夫されてましたよ。2画面使いましたか。詳しくはね、これがある意味唯一のネタバレになるから書かないけどね。でも、やっぱり映像だと間が良くないね。漫才師の博多華丸大吉には辛い選択だったろうと思います。勿論面白かったけど、ごめん、若干ダレていたのもわかっちゃった。


以上。長々と書きました。
博多座は本当に良い劇場です。
しかし演目が限られている。
今のところは次回は宝塚歌劇雪組公演をおっかなびっくり観劇かな?と思っています。