五街道雲助『雲助、悪名一代 芸人流、成り下がりの粋』




落研である我が父は、古今亭一門が好きだ。
志ん生から始まり志ん朝、今は志ん輔がご贔屓だとか。
しかし私は古今亭一門でも、金原亭一門の方が好きだ。

五街道雲助師匠も、金原亭一門の一人だ。
と、云うか今や中核を担っている方だろう。
この本は、雲助師匠の噺家人生を著している。
成り下がりの粋、と副題された。
噺家は成り上がるのではなく、成り下がる。
芸人としての身の置き所、立ち位置、まあ、そんなことを書いている。

他の本で、金原亭一門、雲助一門のことは知っていたが、雲助師匠自身の……特に二つ目時代のことは知らなかった。
二つ目時代の出逢い、特に飲み屋のおやじさんの存在、死。
酒が好きで飲み続けて、痛風で立っていられない程の足の痛みがあっても飲み続ける。
そして、酒で死ぬ。
芸人は芸人らしく死す、酒飲みは酒飲んで死す。
単純なことだけど、それを全うするのは難しい。
しかし、おそらく雲助師匠はこういう経験があって芸人として“成り下がる覚悟”を持ったのではなかろうか。
じゃなかったら、あえていち飲み屋のおやじさんの死を書かないだろう。


他にも弟子への想いや何故弟子は三人しかとらなかったのか、など。
単純明快に書かれている。

読後、最後の見開きの雲助師匠を見たらなんだかスッキリした気分になった。