美輪明宏著『愛と美の法則』

愛と美の法則

愛と美の法則






図書館から借りて、読了した。
美輪さんのバックボーンは長崎で、私の父も長崎出身である。
長崎市内は、実際訪れた人にはわかると思うが、外国文化との調和の上に成り立っている街である。
美輪さんは本書の中で異国文化と日本文化を若いころから吸収し、現在の素地が出来たと書いている。
私の父は戦後の生まれだが、母親(私の祖母にあたる)は裁縫で丸山遊郭の遊女さんたちと親しかったし、また洋服も仕立てたりしたそうだ。
私は昔から父から長崎市内の話を聴き、また実際に訪れて本書の云いたいことがなんとなく理解している。


美しいものがたくさんあった戦前、そしてそれを奪った戦争・長崎での原爆投下の被害。
美輪さんは本書でこれらのことを静かな目線で語っている。時折憤りを表に出して。
戦争後の差別についても語っている。そしてそうした人がいることを訴えかける唄を発表したこと、それが人々の心に届き、人々の想いが美輪さんに届けられたこと。
そのどれもが私の心に響くもので、美輪さんの愛とはなんと深いものかを再認識した。


美輪さんは愛や美について言及している。
曰く、美しい言葉・ものに触れること。それを実行すること。
そうすることで美意識が高くなるのは明白である。
美しい言葉は詩や和歌、短歌などにある。
美しい言葉に接しないと、途端に汚い言葉を使い始める。
それは自分にとってもよくないし、未来にもよくない。
嗚呼、反省しなければと思う。


エディット・ピアフの生涯について、それからわかる“愛”が後半に書かれている。
愛と云うものの輝き、狂気、覚悟が彼女の生涯からよくわかる。
これは本書を読まないと感じ得ないだろう。
恋は誰にだって出来るが、愛は誰でも出来るわけではない。


本書を多くの方に読んでいただきたいと思う。
日本人の美意識回帰・戦争の無意味さ・愛・人生が書かれていると私は思う。
安易に汚い言葉を使いがちな私たちに釘を刺し、美しいものは何かを静かに静かに語ってくださっている。